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東京大学・大学院医学系研究科  尾藤晴彦 平成26年10月1日

Region-specific activation of CRTC1-CREB signaling mediates long-term fear memory.

〇Nonaka M., Kim R., Fukushima H., Sasaki K., Suzuki K., Okamura M., Ishii Y., Kawashima T., Kamijo S., Takemoto-Kimura K., Okuno H., Kida S., ◎Bito H.
(〇:筆頭著者名, ◎:代表著者名)

Neuron, 84, 92-106 (2014)

長期記憶の形成には遺伝子の発現が必要ですが、この過程で重要な役割を担う転写因子のひとつにCREBがあります.CREBは、脳のみならず全身で様々な場面ではたらいており、脳においても、記憶に限らず、発生・細胞の生存維持・体内時計など様々な機能を担っています。CREBによって制御される遺伝子は4000個とも言われており、脳の各領域でどのようにして特異的な遺伝子を読み出し、領域特異的な機能を発揮するのか解明されていませんでした。今回の論文ではCREBの転写補助因子であるCRTC1に着目し、このCRTC1-CREB経路が脳領域特異的にはたらくことを見出しました。具体的には、海馬と扁桃体の両方が必要とされる「文脈依存的恐怖条件付け」という長期記憶のモデルにおいて、CRTC1の寄与が海馬では小さいが、扁桃体では大きいことが分かりました。逆に、海馬でCRTC1の活性を強化すると記憶が強化されましたが、扁桃体では影響がみられませんでした。このような領域特異的なCREB転写補助因子の役割が明らかになったことで、普遍的なCREBという転写因子が脳領域ごとに異なる遺伝子調節を行うことが示唆されます。

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図1 CRTC1およびCREBを制御するシグナル伝達経路

A.CRTC1の核移行。B.CRTC1のリン酸化部位。C.シナプス活動により上昇するCa2+はリン酸化酵素を活性化するシグナル伝達経路を活性化し、CREBのSer133をリン酸化する。栄養因子やcAMPシグナルの下流のシグナル伝達経路もこのCREBのSer133に集約され、CREBの活性化を担う。一方、Ca2+依存的なカルシニューリンはCRTC1のSer151およびSer245を脱リン酸化し、CRTC1の核移行を促進して、CREB依存的転写を活性化する。

 


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図2 文脈依存的な恐怖条件づけ学習課題におけるCRTC1の脳領域に特異的な役割

A.文脈依存的な恐怖条件づけにより、扁桃体においてはCRTC1の核移行がみられたものの、海馬においてはみられなかった。B.扁桃体においてCRTC1をノックダウンしたところ記憶の低下がみられたが(B1)、海馬では変化しなかった。逆に、活性型CRTC1を海馬に発現させると記憶が向上したが(B2)、扁桃体で変化はみられなかった。

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