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東京都医学総合研究所・運動感覚システム研究分野  齊藤実 平成26年11月19日

Glial dysfunction causes age-related memory impairment in Drosophila.

〇Daisuke Yamazaki, Junjiro Horiuchi, Kohei Ueno, Taro Ueno, Shinjiro Saeki, Motomi Matsuno, Shintaro Naganos, Tomoyuki Miyashita, Yukinori Hirano, Hiroyuki Nishikawa, Masato Taoka, Yoshio Yamauchi, Toshiaki Isobe, Yoshiko Honda, Tohru Kodama, Tomoko Masuda, ◎Minoru Saitoe
(〇:筆頭著者名, ◎:代表著者名)

Neuron 84, p753-763 (2014)

歳を取ると起こる記憶力の低下(加齢性記憶障害)は誰にでも起こるが、その発生機構は良く分かっていません。我々は寿命が短いショウジョウバエにより、神経細胞ではなく、グリア細胞のミトコンドリアで働く代謝酵素ピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)活性の、加齢による上昇が加齢性記憶障害の原因となっていることを明らかにしました。PCはピルビン酸からオキサロ酢酸を合成し、これをTCA回路に供給します。ピルビン酸からはオキサロ酢酸だけでなく、乳酸やアセチルCoAなども合成されますが、加齢が進むとPCの発現量が上昇することでピルビン酸の代謝バランスが崩れます。グリアから放出されるD-セリンは記憶形成に重要な働きを担うNMDA受容体の修飾因子ですが、我々は代謝バランスの不全によりD-セリン合成が低下すること、さらに歳を取って記憶力が低下したショウジョウバエにD-セリンを摂食させると記憶力が回復することを明らかにしました。本研究からグリア細胞の機能賦活により加齢性記憶障害を改善する可能性が示唆されました。

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図1dPCタンパクレベルは加齢により増加する。dPC遺伝子のヘテロ変異体dPCEP2547dPCCB0292-3では加齢性記憶障害が抑制されている。(学習後1時間の記憶が野生型では成虫15日齢から低下するが、dPCのヘテロ変異体は30日齢となるも高い1時間記憶力を保持している)。

 


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図2  PCによる加齢性記憶障害の発現 

若いハエではD-セリンの合成を抑制しないようにPCレベルが抑えられている。このため記憶保持に必要なD-セリンが供給され、条件付けによる匂い記憶が保持されハエは危険な匂いを避ける。加齢体では未同定の老化シグナルによりPCレベルが上昇する。結果としてD-セリン合成が低下し、神経細胞に充分なD-セリンが供給されないため記憶障害が起こる。

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