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大阪大学・生命機能研究科 八木健 平成26年4月2日

Developmental epigenetic modification regulates stochastic expression of clustered Protocadherin genes, generating single neuron diversity.

〇Shunsuke Toyoda, Masahumi Kawaguchi, Toshihiro Kobayashi, Etsuko Tarusawa, Tomoko Toyama, Masaki Okano, Masaaki Oda, Hiromitsu Nakauchi, Yumiko Yoshimura, Makoto Sanbo, Masumi Hirabayashi, Teruyoshi Hirayama, Takahiro Hirabayashi, ◎Takeshi Yagi
(〇:筆頭著者名, ◎:代表著者名)

Neuron, 82, 94-108 (2014)

脳は多数のニューロンから構成されているが、個々のニューロンには機能的な個性があり、異なる回路特性をもっています。クラスター型プロトカドヘリン(cPcdh)は脳神経系において強く発現している多様化した細胞表面タンパク質であり、遺伝子プロモーターの選択により個々のニューロンごとに異なるcPcdh遺伝子が確率的に発現しています。今回、筆者らは、de novo型のDNAメチル基転移酵素であるDnmt3bが胚発生の初期にcPcdh遺伝子のプロモーター領域を差次的にDNAメチル化することを発見しました。そこで、ニューロンにおけるDnmt3bの役割を明らかにするため、胎生致死であるDnmt3bノックアウトマウスからiPS細胞を樹立してキメラマウスを作製しました。単一のニューロンのレベルでの解析により、個々のDnmt3bを欠損したプルキンエ細胞は確率的に発現するcPcdh遺伝子の数が増加し、また、樹状突起の異常な分枝が認められました。これらのことから、発生の初期においてDnmt3bによるDNAメチル化が個々のニューロンにおけるcPcdh遺伝子の確率的な発現の頻度を制御しており、樹状突起のパターン形成にも必要であることが明らかになりました。この成果は、ニューロンの個性化における新規のエピジェネティックな制御機構を示唆するものであり、Dnmt3bの変異が原因で起こるヒトの遺伝病ICF症候群や精神疾患の原因の解明にも貢献することが期待されます。


図1 クラスター型プロトカドヘリンをコードするcPcdh遺伝子

(a)cPcdh遺伝子はPcdh-α、Pcdh-β、Pcdh-γの3つの遺伝子クラスターから形成されており、58種類の遺伝子が縦列したゲノム構造をしている。V:可変領域エキソン、C:定常領域エキソン。

(b)cPcdh遺伝子は対立遺伝子ごとに独立して制御されており、個々のニューロンごとに異なる遺伝子を発現している。

 



図2 cPcdh遺伝子のエピジェネティックな制御によるニューロンの個性化

胚盤胞においてcPcdh遺伝子のプロモーター領域はDNAメチル化されていない(白色の丸)が、胚発生の初期にDnmt3bにより細胞ごとに異なるDNAメチル化のパターンが形成される(黒色の丸)。それにより、のちに産生される個々のニューロンにおいて、ニューロンごとに異なるcPcdh遺伝子がエンハンサー(赤色の楕円)により選択され発現する。一方で、Dnmt3bを欠損した細胞はDNAメチル化されず、個々のニューロンにおいてすべてのcPcdh遺伝子を発現してしまうため個性化が起こらない。

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