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筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構 林悠 平成27年10月22日発表

Cells of a common developmental origin regulate REM/non-REM sleep and wakefulness in mice.

  • ◎〇Yu Hayashi, Mitsuaki Kashiwagi, Kosuke Yasuda, Reiko Ando, Mika Kanuka, Kazuya Sakai, ◎Shigeyoshi Itohara.
    (◯:筆頭著者名, ◎:代表著者名)

Science 350, 957-961, 2015

夢を生み出すレム睡眠は、その役割が脳科学の最大の謎の一つでした。レム睡眠に入ったら起こす、という方法では、刺激そのもののストレスの影響を排除できませんでした。そうした中、私たちは、レム睡眠の役割を解明するために、まず、レム睡眠とノンレム睡眠を切り替えるスイッチ役の神経細胞群を特定しました。そして、これらの細胞の働きを操作できるマウスを開発し、人為的にレム睡眠を遮断することに成功しました。さらに、このマウスを解析した結果、レム睡眠がないと、ノンレム睡眠時に出る学習や記憶形成を促す脳波(徐波)が弱まったことから、レム睡眠が徐波を促す作用が明らかとなりました。徐波は、神経細胞のつながりを強めたり、成長ホルモンの分泌を促進したりします。この一連の研究により、レム睡眠が徐波の促進を介して、脳発達や記憶学習に貢献する可能性が明らかとなりました。 

図1 胎児期に小脳菱脳唇の細胞が分裂・移動・分化を経て、睡眠を制御する神経細胞群を構成

小脳菱脳唇由来の細胞がAtoh1 陽性であることを利用して遺伝学的にラベルし、成体まで追跡してその機能を調べました。その結果、脳幹において、睡眠から覚醒への切り替えを担う神経細胞群と、レム睡眠からノンレム睡眠への切り替えを担う神経細胞群を同定することに成功しました。


図2 レム睡眠を阻害できるトランスジェニックマウスの確立

私たちが同定したレム睡眠を抑制し、レムからノンレム睡眠への切り替えを担う神経細胞群に、神経活動を一過的に活性化できるhM3Dq遺伝子を発現させたトランスジェニックマウスを樹立することで、レム睡眠を任意のタイミングで阻害できるようになりました。

図3 レム睡眠はノンレム睡眠中の徐波の維持に重要

上段:正常な睡眠時と、レム睡眠を10分および3時間阻害した後の徐波の比較。10分の阻害では徐波への影響は見られませんでしたが、長時間阻害すると徐波の強さが弱まりました。
下段:徐波の強さの定量的・連続的な観察。通常のノンレム睡眠中の徐波の強さがほぼ一定であるのに対し、レム睡眠を阻害すると徐波の強さが次第に減弱しました。レム睡眠が復活するとその後に徐波が回復することも判明しました。

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