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京都大学・メディカルイノベーションセンター 平野恭敬 平成28年11月14日発表

Shifting transcriptional machinery is required for long-term memory maintenance and modification in Drosophila mushroom bodies

  • ◯◎Yukinori Hirano, Kunio Ihara, Tomoko Masuda, Takuya Yamamoto, Ikuko Iwata, Aya Takahashi, Hiroko Awata, Naosuke Nakamura, Mai Takakura, Yusuke Suzuki, Junjiro Horiuchi, Hiroyuki Okuno & ◎Minoru Saitoe
    (◯:筆頭著者名, ◎:代表著者名)

Nature Communicatinos 7:13471 | DOI: 10.1038/ncomms13471

長期記憶の形成過程では、一過的に遺伝子発現が誘導され、その過程では転写因子CREB、そしてエピジェネティックな制御としてヒストンアセチル化が重要な役割を果たしています。しかしながら、どのヒストンアセチル化酵素がどのような遺伝子発現を制御することで長期記憶が形成されるのか、また遺伝子発現制御は一過的か、それとも恒常的に変化するのか、不明でした。私たちはショウジョウバエをモデル生物として用い、長期記憶形成、その後の記憶維持の時間軸に沿って、必要な転写制御機構が遷移することを見出しました。記憶中枢神経に焦点を当てたエピジェネティクス解析を行うことにより、それら転写制御の標的遺伝子を明らかにしました。その結果、転写制御の遷移は、記憶を形成し、保持する役割とともに、記憶の書き換え可能期間を限定する役割があることが明らかになりました。さらにそのような書き換え可能な期間は、転写制御機構を変化させることで、操作可能であることを示しました。本研究より、クロマチン上の転写制御が遷移することで記憶の状態が変化していることが示唆されました。 

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図1 長期記憶における転写制御の推移と、記憶中枢でのクロマチン解析

(a, b)CREB/CBP依存的記憶形成とCREB/CRTC依存的記憶保持。記憶中枢のキノコ体で転写因子CREB,CBP,CRTCの阻害を行った。RU摂食で各因子を阻害する実験系を用いて学習前から各因子の阻害を行うと、CREB/CBPを阻害したときに 長期記憶形成が障害された(a)。一方、記憶形成後に各因子の阻害を行うと、CREB/CRTCを阻害したときに長期記憶保持が障害された。(c-e)記憶中枢キノコ体の核の単離法。核膜挿入ドメイン(KASH)にFLAGタグをつけ、キノコ体に発現させることでキノコ体細胞核を標識した(c,d)。抗FLAG抗体で免疫沈降することで、FLAG-KASH発現するキノコ体細胞核を単離した(e)。(f)キノコ体細胞核を用いたChIP-seq解析。抗CREB、抗CRTC抗体を用いてクロマチン免疫沈降(ChIP-seq)を行った。(g)学習1日後におけるCREB/CRTC結合遺伝子と、ヒストンアセチル化変動遺伝子の重複。記憶に関連する因子の候補となった。  


図2 長期記憶における転写推移のモデル

CREB/CBP依存的に形成された長期記憶は、CREB/CRTCとヒストンアセチル化酵素であるGCN5とTip60依存的に保持される。記憶保持期間が4日を経過すると、Tip60のみが記憶保持に必要である。CREB/CRTC依存的に記憶保持される期間は、忘却課題により記憶が消失可能な期間である。

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