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千葉大学大学院薬学研究院 殿城亜矢子 平成29年2月14日発表

Age-related changes in insulin-like signaling lead to intermediate-term memory impairment in Drosophila.

  • ◯Kento Tanabe, Motoyuki Itoh, ◎Ayako Tonoki
    (◯:筆頭著者名, ◎:代表著者名)

Cell Rep. 18(7), 1598-1605. (2017)

老化に伴う代謝恒常性の破綻は糖尿病など多くの障害を引き起こしますが、学習や記憶を担う脳機能の障害にも関連することが知られています。また、インスリンシグナル(IIS)の調節に異常がある糖尿病は、認知症など記憶障害の危険因子であることが示唆されています1,2)。しかし、IISが学習や記憶にどのような役割を果たしているのか、また老化に伴う記憶低下へのIISの関与は、未だ解明されていません。本研究ではショウジョウバエの嗅覚記憶をモデルとして老化に伴うIISの変化に着目し、老化に伴って記憶が低下するメカニズムの解明を目的としました。
様々な時期・組織で機能するIISを遺伝学的に一過的に改変させることで、IISの記憶への特異的な影響を検討しました。その結果、インスリン産生細胞からのインスリン様ペプチド3(Dilp3)の分泌や脂肪細胞におけるIISによって記憶の維持が調節されていることが明らかとなりました。またDilp3の発現は老化にともなって特異的に低下することから、老化個体にDilp3を過剰に発現させたところ記憶が向上しました。これらのことから、IISの加齢に伴う変化が記憶低下の一因であることが示唆されました。




図1:インスリンシグナルは中期記憶に必要である

A. 若齢個体(10日齢)と、老齢個体(30日齢)それぞれにおける、インスリン産生細胞(IPC)細胞死誘導と記憶アッセイのタイムコース。
B. 若齢個体のIPCにおいて細胞死誘導される群(RU+)の3時間記憶のスコア(PI)は、コントロール群(RU-)に対し有意に低下しました。10日齢に比べて30日齢では中期記憶のPIが低下しますが、IPCでの細胞死誘導は30日齢における中期記憶PIに影響しませんでした。
C. IPCでdilp3をノックダウンしたハエ(Dilp2>dilp3RNAi-A)における中期記憶(黒)はコントロール群(白、グレー)に対して顕著に低下しました。
D.老齢個体においてIPCでdilp3が誘導される群(Dilp2-GS>dilp3、RU+)の中期記憶のPIは、コントロール群に対して向上しました。グラフの上図は30日齢のハエにおける、Dilp3過剰発現と記憶アッセイのタイムコース。


図2:老化に伴う記憶低下と記憶の維持に関与するインスリンシグナルの概念図

インスリン産生細胞からのインスリン様ペプチド3(Dilp3)の分泌や脂肪細胞におけるIISによって記憶の維持が調節されている。またDilp3の発現は老化にともなって特異的に低下することから、IISの加齢に伴う変化が記憶低下の一因であることが示唆された。

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