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理化学研究所・脳科学総合研究センター 吉原 良浩 平成28年5月30日発表

Olfactory receptor for prostaglandin F2α mediates male fish courtship behavior.

  • ◯Yabuki Y, Koide T, Miyasaka N, Wakisaka N, Masuda M, Ohkura M, Nakai J, Tsuge K, Tsuchiya S, Sugimoto Y, ◎Yoshihara Y.
    (◯:筆頭著者名, ◎:代表著者名)

Nature Neuroscience 19: 897-904, 2016

嗅覚系は、匂い分子やフェロモン分子を受容し、その情報を鼻から脳へ伝えて、個体の生存や種の保存のために必要な行動の発現や生理的変化をもたらす神経システムです。とりわけ、食べ物の匂いへの誘引行動、危険な匂いからの逃避行動、フェロモンを介した性行動は、多くの生物に共通する3つの根源的な嗅覚行動です。私たちは小型の熱帯魚ゼブラフィッシュを用いて、オスの性行動を調節する神経メカニズムを解析しました。その結果、排卵期のメスが水中に放出する性フェロモンである「プロスタグランジンF2α(PGF2α)」を特異的に認識する嗅覚受容体「OR114−1」を発見しました。また、PGF2αの鼻への刺激によって活性化される嗅覚神経回路の全体像を明らかにしました。さらにゲノム編集技術を用いて、PGF2α嗅覚受容体OR114-1を欠損したゼブラフィッシュを作製しました。すると、オスの欠損体ではメスへの誘引および求愛行動が著しく減少することが分かりました。この結果から、PGF2αとその受容体OR114−1が魚の性行動の促進に重要な役割を果たすことが明らかになりました。このような性フェロモンを介しての求愛行動は、ショウジョウバエなどの昆虫からマウスなどのほ乳類に至るまで、多様な動物種で観察されることから、進化的に保存された共通の神経メカニズムが存在すると考えられます。本研究によって、性フェロモンという感覚入力から、求愛行動という行動出力までの分子・細胞・神経メカニズムの一端が解明されました。


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図1 性フェロモンPGF2αによって活性化されるゼブラフィッシュ嗅覚神経回路

鼻腔の奥にある嗅上皮上に存在する嗅細胞で受容された性フェロモンPGF2αの情報は、嗅球の腹内側糸球体(vmG)、高次嗅覚中の終脳腹側部腹側核(Vv)、視索前核(PPa)、外側視床下部(LH)などへ伝わり、誘引行動、求愛行動が発現される。


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図2 PGF2α嗅覚受容体欠損ゼブラフィッシュの行動異常

(A)PGF2αに対する誘引行動。オスのゼブラフィッシュ4匹を水槽に入れ、水槽の片側からPGF2αを、逆側から溶媒(DMSO)を投与した(横軸の2分の時点で投与)。青および赤の点は水槽の長軸方向の魚の位置を示す。野生型フィッシュは(左)PGF2α投与側に集まっているが、OR114−1欠損フィッシュ(右)ではそのような誘引行動は観察されない。
(B)メスのフィッシュへの求愛行動。オスとメスを1匹ずつ水槽に入れ、オスの求愛行動(追尾・タッチ・回り込み)を観察した。野生型フィッシュ(青)に比べて、OR114−1嗅覚受容体欠損フィッシュ(赤)では、追尾の時間(左)、タッチの回数(中央)、回り込みの回数(右)が大きく減少していた。

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