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生理学研究所・脳機能計測・支援センター 村越秀治 平成29年4月5日発表

Kinetics of Endogenous CaMKII Required for Synaptic Plasticity Revealed by Optogenetic Kinase Inhibitor.

  • ◯◎Murakoshi H, ◯Shin M, Parra-Bueno P, Szatmari EM, Shibata AC, and, ◎Yasuda R.
    (◯:筆頭著者名, ◎:代表著者名)

Neuron 94 (1): p37-47, 2017.

CaMKII(Ca2+/Calmodulin-dependent protein kinase II)は海馬や扁桃体神経細胞に豊富に存在しており、シナプスの可塑性にとって重要な役割を果たしていることが明らかになってきています。この分子の特徴は12量体を形成することで自立的な(長時間の)活性化が可能な機構を有していることです。このことから、CaMKIIは記憶を長時間保持するためのメモリー分子として働いていると考えられてきました。しかしながら、CaMKIIが長時間活性化しているという報告がある一方で、短時間しか活性化していないという報告もあり、未だに決着には至っていません。そこで本研究では新規に高い時間分解能と特異性をもつ遺伝子コード型の光応答性CaMKIIを開発し、これをマウスの扁桃体に適用することでCaMKII活性と記憶の関係を調べました。この結果、恐怖記憶において、CaMKII活性は記憶形成の瞬間に必要であり、保持には必要ないことを支持する結果を得ました。




図1CaMKIIの活性化と自己リン酸化

CaMKIIは不活化状態では閉じた構造をとりますが、カルシウムイオン(Ca2+)と結合し活性化したカルモジュリン(CaM)と結合することにより、開構造になります(活性化)。これにより、キナーゼドメインが外に飛び出し、自己リン酸化します。


図2 光応答性CaMKII阻害ペプチド

青色光受容タンパク質であるPhototropin1のLOV2ドメイン(404–539番のアミノ酸)にCaMKIIの阻害ペプチド(AIP2:アミノ酸配列KKKLRRQEAFDAL)を遺伝子工学的に融合しました。暗条件下では折りたたまれた構造をとっており、CaMKIIに結合しません。しかし、青色光照射により、AIP2が LOV2からリリースされるとCaMKIIのキナーゼドメインに結合し、その活性を阻害します。


図3 恐怖記憶におけるCaMKII活性阻害

(A)アデノ随伴ウイルスを利用してpaAIP2をマウスの扁桃体神経細胞に導入します。また、青色レーザーを光ファイバーで扁桃体に照射します。受動的回避テストによって、記憶形成と維持が光照射(CaMKII活性阻害)に依存するかどうかを調べました。文献1より許可を得て改変転載。

(B)トレーニング前からテスト時まで光照射を行ったマウス群(左)では殆どの個体が200秒以内に暗室に入りました。一方で、トレーニング後から光照射を行ったマウス群(右)では半分以上の個体が計測時間中(600秒)に一度も暗室に入りませんでした。これらの結果からトレーニング時のCaMKII活性が記憶形成に重要であると考えられます。文献1より許可を得て改変転載。

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