文部科学省
JSPS
科研費
公募研究募集

細川 貴之坂口 昌徳林 悠中井 淳一殿城 亜矢子

山口 正洋尾藤 晴彦竹内 秀明野村 洋日比 正彦

櫻井 芳雄平野 恭敬王 丹八木 健美津島 大

高橋 琢哉木村 梨絵本間 光一渡部 文子古田 寿昭

久原 篤杉山(矢崎) 陽子小川 正晃高雄 啓三佐藤 正晃

遠藤 昌吾

公募研究

記憶の形成と精緻化の神経機構の解明

代表者
東北大学・生命科学研究科
細川 貴之

ヒトやその他の霊長類をはじめとする高等脊椎動物は、経験した事象(環境刺激)とその結果の関係を学ぶことで、将来起こることを予測し、環境に適応する能力をもっている。 特に霊長類は、最初、刺激と結果の関係を1対1の連合記憶として学習するが、同様の事象を何度も経験するうちに共通する特徴をもつ刺激同士をグループ(カテゴリ)として認識するようになると考えられている。 このように複数の刺激をカテゴリとして認識することで、情報は構造化され、汎用的な知識としての記憶が形成される。 これを記憶の精緻化と呼ぶ。このようなカテゴリ化された知識は抽象的な思考の基盤となるものであり、動物の認知行動において非常に重要なものである。

サルを用いたこれまでの研究から、1対1の連合学習は下側頭皮質内側部(嗅周野)で行われそこで記憶情報として貯蔵されていること、 前頭連合野の神経細胞が見た目の類似度に基づく知覚的なカテゴリの判断に関係していることが知られている。しかし、1対1の連合記憶から構造化されたカテゴリの記憶が学習によってどのように形成されるかはまだよく分かっていない。 本研究では、刺激と結果の関係に基づくカテゴリの情報を使って、ルールの変化に素早く対応することが要求される「グループ逆転課題」をサルが行っている最中に、前頭連合野および側頭葉から神経活動を記録する。 これにより、カテゴリの記憶が形成、利用、再編される過程の神経機構のダイナミズムを解明するとともに、比較的低次な1対1の連合記憶とカテゴリという高次な記憶が脳内でどのように表現されているのか、その違いと共通点を明らかにする。

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睡眠中の新生ニューロンの興奮が記憶に及ぼす機能

代表者
筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構
坂口 昌徳

脳内では成人後、わずかな例外を除きニューロンは新生しない。しかし、海馬の歯状回では、成人後も盛んなニューロンの新生が起こる。 これまで申請者らは、マウス成体の海馬で新生したニューロンが、記憶の、特に詳細な部分の情報を貯蔵することを示した(Carvalho/Sakaguchi et al., J.Neurosci.,2011,v31p15113)。 一方で、睡眠が、成体マウスの嗅球で新生したニューロンの除去を促進することが示された(Yokoyama et al.,Neuron,2011,v71p883)。 このことは、睡眠が、新生したニューロンが担う記憶情報の処理に、積極的な機能を持つことを示唆する。近年、睡眠中の海馬ニューロンの興奮が、記憶に重要な機能を持つことも示されている。 そこで本研究では、睡眠中の成体海馬の、特に新生ニューロンの興奮が記憶に与える機能を、記憶の主な段階それぞれを区別し、明快に示す(図1)。

申請者がこれまで培った、新生ニューロンのみに遺伝子発現を誘導する技術、新生ニューロンが担う記憶への機能を特異的に検出する技術、光遺伝学を用いて神経回路を高い時間・空間的分解能を持って制御する技術(図2)、 睡眠中のリアルタイム脳波解析技術を用いる。

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睡眠中の神経回路ダイナミズム

代表者
筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構
林 悠

私たちは毎日寝たり起きたりを繰り返すことで、脳や体も常に状態が劇的に変化している。 近年、睡眠が記憶ダイナミズムにも大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。起きている時に何かを思い出そうとすると、その記憶は一時的に脆弱化する。 これに対し、寝ている時に記憶を再活性化すると、その記憶は逆に強化されるのである。しかしながら、起きている時と寝ている時で、具体的にどう脳内での情報処理過程が異なるかは分かっていない。 そこで本研究では、学習を経たマウスの脳内を生きたまま観察し、睡眠中に神経回路がどう振る舞うかを解明する。

さらに、哺乳類の睡眠はレム(急速眼球運動)睡眠とノンレム睡眠から構成される。レム睡眠は夢を生じ、一方、ノンレム睡眠は徐波と呼ばれる同調的な神経活動を生じる。 上述の睡眠中に起こる記憶固定化には、ノンレム睡眠の関与が知られるが、レム睡眠の記憶における役割は謎である。そこで本研究では、我々が同定したレム睡眠制御ニューロンを活動操作することで、 レム睡眠を一時的に促進または阻害し、記憶や神経回路の可塑性への影響も明らかにする。「なぜ寝るのか?」や「なぜ夢を見るのか?」などの素朴な疑問に対し、本研究では記憶ダイナミズムの視点から解明に挑む。

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運動学習における長期記憶機構の研究

代表者
埼玉大学・理工学研究科
中井 淳一

我々の脳では、主に海馬や大脳が関与する宣言的記憶と、主に小脳が関与する運動学習の記憶が知られている。 宣言的記憶とともに運動学習においても運動学習の記憶がダイナミックに変化していることは、スポーツにおいて日々のトレーニングが重要なことからもうかがい知れることである。

短期記憶から長期記憶へと移行する現象(記憶の定着)について、運動学習では小脳皮質や小脳核が関係することが報告されている。しかし、小脳における記憶の定着がどのように起こるのか、その分子メカニズムについては不明な点が多い。

我々はこれまでGFPをもとにしたカルシウムプローブであるG-CaMPを開発し、神経回路機能の研究に活用してきました。小型モデル動物であるゼブラフィッシュは脊椎動物に属し、その小脳は哺乳類との類似性において構造的、機能的によく保存されている。ゼブラフィッシュの稚魚は脳が小さく、また透明であるため、可視化による神経回路の実験および解析に都合がよい。そこで本研究計画では、ゼブラフィッシュを用いて、運動学習の記憶に関する光学的測定系を開発するとともに、運動学習の情報が短期記憶から長期記憶へと置き換わっていくダイナミズムを担う神経回路機構を解明する。

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老化に伴う代謝恒常性の破綻による記憶低下機構の解明

代表者
千葉大学大学院薬学研究院
殿城 亜矢子

学習や記憶機能は、加齢にともなって低下する。本研究提案では、加齢にともなう生体内の代謝機能の低下が記憶機能に与える影響を明らかにし、加齢性記憶低下の原因を理解することを目的とする。 記憶の形成機構やインスリンシグナルによる代謝制御機構は種を超えて保存されている。本研究では、ハエ嗅覚記憶をモデル系として用いて、 老化による代謝機構の低下を環境的あるいは遺伝学的に操作し、神経・分子ネットワークに与える影響を評価することで、加齢性記憶低下のメカニズムを明らかにする。 上記目的のため、以下の計画研究を行う。

①生体内の代謝恒常性の変化が記憶形成に与える影響の解析
生体内の代謝を変化させた個体においてハエ嗅覚記憶の行動解析を行い、記憶形成に与える影響を明らかにする。

②加齢にともなう代謝恒常性の変化が記憶機能の低下に与える影響の解析
加齢にともなう代謝機能の低下を遺伝学的操作により改善し、老齢個体における記憶低下に与える影響を、ハエ嗅覚記憶の行動解析により明らかにする。

③生体内の代謝恒常性の変化が影響する嗅覚記憶神経系の同定
ハエ嗅覚記憶で形成される記憶痕跡をカルシウムイメージングにより可視化する手法を用いて、生体内の代謝機能を変化させた個体における記憶痕跡を評価する。

④ 生体内の代謝恒常性の変化が影響する分子ネットワークの同定
生体内の代謝変化によって、脳内あるいは特定の神経細胞群の遺伝子プロファイリングが変化している可能性を考え、発現変化する分子ネットワークをトランスクリプトーム解析により同定する。

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覚醒睡眠サイクルに基づく匂い学習記憶と嗅覚神経回路の可塑性の解析

代表者
東京大学・大学院医学系研究科
山口 正洋

嗅覚系は、食べ物の探索・摂取、捕食者からの逃避など、動物の根源的な行動を支えており、日々変わる匂い環境に対して適切な行動をとるために、嗅覚系の学習記憶は極めて重要である。 近年、嗅覚学習記憶に伴って嗅球投射ニューロンの活動性がダイナミックに変化することが判明し、嗅覚学習記憶にすでに嗅覚一次中枢の嗅球神経回路の可塑的変化が関与していることが明らかとなってきた。 しかしその可塑性変化をもたらす神経回路機構は全く不明である。

嗅球神経回路の可塑的変化の中心を担うのは介在ニューロンの顆粒細胞であり、特に顆粒細胞から嗅球投射ニューロンへの抑制性シナプス入力と考えられている。また嗅球顆粒細胞は常に新生しており、神経回路に高い可塑性を付与している。 研究代表者はこれまで、新生顆粒細胞の選別が覚醒時の嗅覚経験とその後の睡眠という覚醒・睡眠サイクルに基づいて行われることを明らかにしてきた。さらに、睡眠中の嗅皮質から嗅球への同期的なtop-downシナプス入力が、 新生顆粒細胞の選別を促進するシグナルであることを見いだしている。

本公募研究では以上をふまえ、嗅覚学習記憶の形成機構を、覚醒・睡眠サイクルに基づく嗅球神経回路の可塑的変化という観点から理解することを目指す。マウスの嗅覚行動学習に伴う嗅球神経回路の電気生理学的機能変化、 覚醒・睡眠サイクルにおける嗅球-嗅皮質間の情報のやり取り、またそれらに対する新生顆粒細胞の役割に着目する。

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Dual FRET技術を用いた長期神経可塑性機構の解読

研究代表者
東京大学・大学院医学系研究科
尾藤 晴彦

神経伝達物質受容に引き続くシナプス電位の変化は、神経細胞内で電気的シグナルとカルシウム流入などを引き金とする化学的シグナルの両者を生成する。 カルシウムシグナルは、シナプス可塑性を引き起こす原動力となるのみならず、シナプスから核へのシグナリングの引き金となることを我々はこれまで明らかにしてきた。 しかし、1)樹状突起の一部分のみが刺激された時に、どのように核へシグナルは到達するのか、2)このような場合、リン酸化カスケード活性化は核内で起こるのか、核外で起こるのか、 という点については、技術的な限界から、ほとんど研究が進んでいない。樹状突起から核へ伝わるシグナリングの謎を解明するため、本研究ではCREBリン酸化のFRETリポーターを作出し、 CaMKK-CaMKIVとの同時可視化などを、最近我々が開発したdFOMA(dual FRET with Optical Manipulation)法を用いて定量的イメージングを行う。これらの結果を基に、 長期記憶の素過程の一つであるCREB リン酸化の時空間的ダイナミクスの分子基盤を解明し、cellular consolidationの重要メカニズムを解き明かす。

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社会認知を介した意思決定に関わる神経ネットワークの解析

代表者
岡山大学・大学院自然科学研究科
竹内 秀明

社会認知能力を持つ動物は、集団内の他メンバーを記憶•識別して、他者との社会関係を理解して、社会的な意思決定を行う。これまでは社会認知を介した意思決定に関わる高次脳機能の研究は主にヒトを対象にして進められているが、近年になってグッピーやシクリッド、さらに分子遺伝学のモデル生物であるメダカも個体認知能力を持つことが明らかになった。メダカのメスの配偶者選択において、性成熟したメスメダカは前から見ていたオスを視覚記憶して、「見ていたオス」を配偶相手として積極的に受け入れ、「見ていなかった」オスを拒絶する傾向がある。このことから、オスとの社会関係(相手を視覚記憶しているか否か)が、メスの配偶相手の受入れ・拒絶の意思決定に影響を与える。また配偶者選択の意思決定において、中枢神経モジュレーターであるGnRH3ニューロンが中心的な役割を持っている。しかし、魚類の個体認知能力に関わる神経機構は全く不明であり、さらに記憶・学習に関わる神経機構とGnRH3ニューロンとの関係も完全なブラックボックスである。そこで、本研究ではメダカの個体認知に必要な脳領域を検索し、さらに同定した脳領域とGnRH3ニューロンを繋ぐ神経回路を検索することで、個体認知から意思決定に至る神経ネットワークを解明することを目的とする。

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神経ネットワークの内部状態による記憶の形成、想起の制御

代表者
東京大学・大学院薬学系研究科
野村 洋

脳は外部刺激を受けなくても、秩序を持った意味のある活動を続ける。膜電位は自発的に変動し、発火活動にまで至る。自発活動は、外部刺激を受けない睡眠時にも途切れることがない。 自発活動は決してランダムではなく、同期活動などの秩序をもって生じる。従来の記憶研究では、外部刺激の強度やタイミングが重要であると考えられ、外部刺激に対するニューロンの発火応答やシナプス入力の大きさ、 それらの変化に専ら興味が注がれてきた。そのため自発活動は背景ノイズとして扱われ、取り除くべきものと考えられてきた。しかし我々は、“脳の内部状態”を反映した“自発活動”も記憶形成、想起に重要であると考える。 本研究では主に以下の2点を明らかにする。(1)“自発活動”と“外部刺激に対する神経活動”や“可塑性の大きさ”を同時に測定し、それぞれの関係を調べる。(2)行動における自発活動の役割を明らかにする。 特定の細胞集団の自発活動を、特定のタイミングで抑制し、行動に与える影響を調べる。主にマウスの行動解析、オプトジェネティクス、電気生理学的手法、イメージングを用いてこれらの課題に取り組む。 以上の研究を通じて、自発活動という新たな視点から、記憶メカニズムの解明を目指す。

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小脳神経回路にコードされる恐怖応答記憶のメカニズムの解明

代表者
名古屋大学・生物機能開発利用研究センター
日比 正彦

脊椎動物の小脳は、円滑な運動制御のみならず、認識・感情などの高度な精神活動とそれに関連する学習にも関与する。 精神活動において学習された情報は小脳神経回路に貯蔵されると考えられるが、実際の学習過程で情報がどのように処理・記憶されるかは明らかでない。 真骨魚類や哺乳類においては、無条件刺激(電気ショック)と条件刺激(光刺激等)を連合学習させることにより、条件刺激だけで恐怖情動を誘発し、徐脈・逃避行動を誘導することができる。 小脳を破壊あるいは機能阻害すると、この恐怖応答学習ができなくなることから、恐怖を伴う連合学習で形作られた記憶痕跡が小脳神経回路に貯蔵されており、条件刺激により記憶がリコールされ、恐怖応答を生じるものと考えられる。

本研究では、ゼブラフィッシュをモデルとして、(1)Gal4-UASシステムを用いて小脳神経回路の神経活動をモニターまたは神経活動を操作できるトランスジェニックを作製し、(2)恐怖応答学習において活動が活性化あるいは抑制される神経回路素子を検索する、(3)個々の小脳神経回路素子を活性化あるいは阻害した際の恐怖応答学習および学習によって形成された記憶維持に与える影響を検討することで、小脳神経回路の恐怖応答学習・記憶維持における役割を解明する。

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記憶の多様な形成と再形成を実現するセル・アセンブリの解析

代表者
同志社大学・脳科学研究科
櫻井 芳雄

記憶の形成に関する認知心理学的研究は、記憶が個々の情報のネットワークとして形成されると仮定してきた。 また、その情報ネットワークがさらに変化し再構成されることにより、有限な神経回路から無限で多様な記憶が次々と形成されると唱えてきた。 しかし、そのように多様な記憶の形成と再形成を実現している神経回路の動態は、まだわかっていない。 記憶の形成に伴い、記憶情報をコードする機能的な神経細胞集団、すなわちセル・アセンブリ(cell assembly)は、どのように形成されるのであろうか? また、一旦形成されたセル・アセンブリは、次に新たな記憶が形成される際、あるいはかつての記憶が消去あるいは再形成される際、どのように変化するのであろうか? 本研究は、記憶の形成と再形成のダイナミクスをセル・アセンブリの活動から解明することをめざす。そのために、ラットが複数の記憶課題(条件性弁別課題)を次々学習していく全期間をとおし、 近接した複数ニューロンの活動を特殊電極で同時記録する(図1)。そして、独立成分分析(ICA)を用いることで、記録したニューロン集団の活動を個々のニューロン活動に正確に分離し(図2)、 大小の機能的なニューロン集団の発火頻度と同期発火の変化を解析する。具体的には次の3点を明らかにする。(1)記憶情報をコードするセル・アセンブリは、記憶Aの形成→記憶Bの形成→記憶Cの形成→記憶Aの再形成、 の全プロセスをとおしてどのように変化するのか?(2)そのようなセル・アセンブリの変化は、記憶形成でそれぞれ独自の役割を持つ前頭前野、運動野、海馬においてどのように異なるのか? (3)前頭前野―運動野―海馬にまたがるマクロな機能的回路が、記憶の形成と再形成のプロセスでどのように変化するのか?

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長期記憶の不安定化を司る分子メカニズムと神経基盤の解明

代表者
京都大学・メディカルイノベーションセンター
平野 恭敬

学習で獲得した情報は、新規遺伝子発現を介して長期記憶として固定化される。一方、刻々と変化する環境に適応するため、固定化された長期記憶は修飾され、ときには消去される必要がある。 このような長期記憶の不安定化の現象は知られているが、そのメカニズムを示唆する知見は非常に乏しい。私はこれまでにショウジョウバエをモデル生物として用い、 特異的な転写因子が長期記憶の不安定化に重要な役割を果たしていることを見出した。
本研究では、1:長期記憶の不安定化に関わる転写因子の標的遺伝子を新規に開発した分子生物学的手法を駆使して同定し、 そのメカニズムの解明を目指す。さらに2:長期記憶の不安定化を誘導する神経基盤、特定の神経を抑制、または活性化させるショウジョウバエの遺伝学的手法を用いて明らかにする。 これらにより、今まで謎であった長期記憶の不安定化メカニズムの理解にブレークスルーをもたらすことが本研究のねらいである。

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Cellular environment-dependent RNA methylation at synapse during learning and memory

代表者
京都大学 物質−細胞統合システム拠点
王 丹

How do neurons store information from past events? Memory extensively interacts with various cellular and environmental signals, including energy and nutrient availability. When the cellular environment is favorable (a healthy state), a memory can be formed and reinforced. When the environment is less favorable (diseased states), a person’s ability of learning and memory can be compromised. From a molecular point of view, the integration of environmental cues and memory can occur through epigenetic processes during which gene expression is regulated through a wealth of DNA and histone modifications.

Recent evidence has suggested that RNA methylation may occur as another functional link between energy consumption, cellular environment and memory storage, possibly at single synapse level. N6-methyladenosine (m6A), a highly prevalent mRNA modification in the brain increases along aging and regulates expression level of many proteins important for neuronal signaling, including dopamine receptors. Variations in the m6A modification enzymes not only predispose to obesity in humans, but also link to aging-dependent reduced brain volume, loss of memory, and risk of alcohol dependence. We hypothesize that m6A modulates spatiotemporal regulation of neuronal gene expression at synapse, which in turn, regulate cellular response of neurons to learning-related stimuli to store information of past events. This cellular mechanism may play critically important roles in aging-, nutrition-, alcohol-dependent “memory dynamism”.

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記憶ダイナミズムをもらたす局所回路形成メカニズムの解析

代表者
大阪大学・生命機能研究科
八木 健

記憶ダイナミズムは、脳における神経細胞の集団的活動によりもたらされている。この集団的活動の基盤には、個々の神経細胞がつくる複雑なネットワークの性質が関与することが示唆されている。 しかし、記憶ダイナミズムに関わる個々の神経細胞のつくる局所回路の性質を明らかにした例はほとんどない。私たちはこれまでに、 個々の神経細胞で異なる組み合わせで発現する細胞接着分子群であるクラスター型プロトカドヘリン(cPcdh)を同定し、この分子群が記憶に関わることを明らかにしてきた。 また、このcPcdh分子群が局所回路形成に関わることも明らかになってきた。これらの結果は、cPcdh遺伝子群が局所回路形成と記憶ダイナミズムに関与する可能性を強く示唆するものである。 そこで本研究では、個々の神経細胞でランダムに発現するcPcdh遺伝子群が形成する局所回路の性質と記憶ダイナミズムとの関連性を明らかにすることにより、記憶ダイナミズムを操作する新たな方法を開発する。 本研究は、神経細胞の集団的活動がどの様(How)に形成されるのかに迫る研究であり、これまでにない独創性の高い研究である。

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記憶ダイナミズムを操作する方法の開発

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エピソード学習で動的に変化する海馬発火活動とCA1シナプスの多様な可塑性

代表者
山口大学大学院医学系研究科・システム神経科学分野
美津島 大

分担者
山口大学大学院医学系研究科・システム神経科学分野
石川 淳子
木田 裕之
﨑本 裕也

海馬は「いつ、どこで、何があったか」というエピソード記憶の形成に中心的な役割を持つ。 海馬には時間情報 (Mitsushima et al, J Neurosci 2009)や空間情報 (Wills et al, Science 2010)が入るが、記憶の符号化ルールは未だ不明である。 我々は回避学習が海馬CA1ニューロンのAMPA受容体を興奮性シナプスへ移行させ、これを阻止すると回避学習が成立しないことから 、AMPA受容体のシナプス移行が学習成立に必要であることを証明した(Mitsushima et al, PNAS 2011)。

さらに、回避学習はAMPA受容体を介する興奮性シナプスの可塑性だけでなく、GABAA受容体を介した抑制性シナプスの可塑性も高める結果、個々のCA1ニューロンが複雑かつ多様なシナプス入力を保持することも発見した。 興奮性シナプスの多様性や抑制性シナプスの多様性を失わせると、どちらの場合も学習が成立しないため、学習がもたらす多様なシナプス可塑性がCA1ニューロンの記憶痕跡であると考えられた(図:Mitsushima et al, Nat Commun 2013)。

本研究では、回避学習のみならず文脈の異なる様々なエピソード学習を行い、海馬発火活動に及ぼす影響を、自由行動動物を用いて解析する。 まず、文脈の異なるエピソード学習の過程を、それぞれin vivo単一ニューロン発火活動として捉え、リアルタイムで記憶形成過程を明らかにする。 さらに遺伝子導入動物に文脈の異なるエピソード学習を負荷し、パッチクランプ法で多様なシナプス可塑性として残された記憶痕跡を明らかにする。 免疫組織学的な解析も進め、興奮性シナプスと抑制性シナプスに刻み込まれた、記憶痕跡の位置や分布を明らかにする。エピソード記憶の符号化ルールを総合的に導き出し、 メカニズムの全容が明らかになれば、トラウマ記憶の消去や、認知症に対する作用点を明示し、新たな創薬開発の突破口を開くはずである。

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海馬CA1ニューロンとシナプス変化。エピソード学習はAMPA受容体を介する興奮性シナプスだけでなく、GABAA受容体を介する抑制性シナプスも多様に強化した。結果、個々のニューロンに特徴的な出力が形成され、記憶の情報処理が可能になると考えられる。

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記憶ダイナミクスの時空間的解析

代表者
横浜市立大学医学研究科・生理学
高橋 琢哉

脳は外界からの刺激に反応し、時々刻々と変化していく。このような脳の変化を可塑性と呼ぶ。脳細胞から別の脳細胞に情報を伝える構造体がシナプスである。 シナプス前神経細胞に刺激が加わると、その神経細胞のシナプス前末端から神経伝達物質が放出され、その受け手の神経細胞にあるシナプス後膜の受容体に結合し、情報が伝達される。 シナプスの興奮性シナプスのうち90%を占めているのが、グルタミン酸を神経伝達物質とするグルタミン酸シナプスである。グルタミン酸受容体にはいくつかの種類が報告されてるが、 その中でもAMPA受容体と言われる一群の受容体は非常に重要な役割を果たしている。シナプスに連続刺激が加わるとシナプス応答が長期的に増強するという現象が知られている。 これをシナプス長期増強(Long Term Potentiation:LTP)とよび、神経可塑性の細胞メカニズムであると考えられてきた。LTPが発現する際にAMPA受容体がシナプスへ移行し、 シナプスにおけるAMPA受容体の数が増えることがメカニズムの一つであることが知られている。我々は、海馬依存的記憶が形成される際にもAMPA受容体が海馬シナプスにおいて シナプスへ移行することを示している(Mitsushima et al. PNAS 2011, Mitsushima et al. Nature Communications 2013)。本課題においては新規イメージング技術を開発し、 記憶のダイナミズムを時空間的に解析していくことを目的としている。

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運動に関わる局所神経回路の流動性が担う機能

代表者
生理学研究所・視覚情報処理研究部門
木村 梨絵

運動学習の過程で、大脳皮質の神経活動に生じる変化の全体像は、いまだ捉えられていない。 これまでの研究では、動物に同じ課題を繰り返させて、個々の細胞や多数の細胞群の活動の試行平均が解析されてきたが、私は、試行ごとの活動に注目して解析することにより新たな知見が得られると考えている。 我々は、ラットを用いた解析により、学習成立後にも、個々の神経活動、あるいは多細胞間の発火連関には、大きな試行間ばらつきが存在することを見出している。 同じ課題を実行する際の試行ごとの神経活動のばらつき(流動性)の機能的意義は、いまだ解明されていない。

本研究では、特定の視覚刺激パターンとレバー引きを関連付ける運動課題をラットに学習させる過程において、 大脳皮質の入力にあたる視覚野と、出力にあたる運動野の神経活動の多細胞同時記録(マルチユニット記録)を覚醒状態で行う。試行毎の運動課題の成績と神経活動を対応させ、 学習過程で起きる記憶ダイナミズムを、特に試行間ばらつきに着目して解析する。また、学習成立後に視覚刺激のコントラストを下げて不正解の試行も生じる状況を作り、 課題の正誤と神経活動を対応付け、課題の成功に関わる神経活動特性を明らかにする。さらに、視覚野あるいは運動野の特定の神経細胞群にチャネルロドプシン2を発現させ、 視覚刺激に同期してその細胞を人為的に発火させ、試行間での発火のばらつきを小さくする。この流動性の低下が課題の遂行に及ぼす影響を解析し、試行間ばらつきと知覚・運動機能の関連性を検討する。 以上の解析により、運動学習を担う大脳皮質の神経機構と試行間の神経活動のばらつきの機能的意義の解明を目指す。

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学習記憶能力を賦与するホルモンの脳内作用メカニズムの解明

代表者
帝京大学・薬学部
本間 光一

刻印付け(刷り込み)は、孵化直後の鳥類ヒナが親鳥を記憶し追従する早期学習の典型例であり、臨界期を有する記憶のメカニズムを解析するモデルとなっているが、 孵化後2,3日間に限局された臨界期を決定する因子は不明であった。

我々は、ニワトリヒナを用いた実験系(図1)において、学習(刻印付けトレーニング)を開始すると甲状腺ホルモン(T3)が脳内へ急速流入し、臨界期を開く決定因子となること、 そして脳内の神経細胞に30分以内のnongenomicな作用を引き起こすことで記憶獲得に至ることを発見した。またT3が一過的に作用すると、 その後行う他の強化学習の習得効率が顕著に向上すること(メモリープライミングと命名)、さらにT3を脳内に局所的に注入することで、一度閉じた臨界期を再び開けることも可能であることを示した(図2)。 すなわち学習臨界期は学習自身によって開かれるのである。

学習臨界期はこれまで、その時期や長さにおいて個体発生の中で遺伝的に固定されていると考えられてきたが、本研究の結果は、学習臨界期の時期や長さがホルモンの作用により可変的になり得ることを示す。 学習臨界期は、その厳格さに違いはあるものの学習一般に存在するものと考えられる。本研究は、学習の実行(刻印づけ)に関与する分子メカニズムと、学習の習得を可能にする能力を与える分子メカニズム(メモリープライミング)を 分離して解析できる利点を有する。

本研究では、記憶を、定量的かつ個体レベルで解析できる刻印付けを活用して、記憶が形成される分子メカニズムを明らかにする。 また、記憶学習能力を賦与するメモリープライミングの分子的な実体を明らかにする。さらに新たなメモリープライミング分子を検索し哺乳類の学習系に応用する。 以上の解析を通じて、学習臨界期は学習自身によって開始され、さらに次の学習の臨界期の扉を開いていくという学習記憶の階層性を分子レベルで示していく。

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図1 実験室内での数時間の刻印付け(刷り込み)トレーニングによって、ヒヨコは親に見立てたレゴブロックの形と色を記憶して愛着を示すようになる。 刷り込み強度を定量的に調べることができることから、生化学的、薬理学的な解析が可能となる。

図2 ヒヨコが学習を開始すると甲状腺ホルモン(T3)が脳内へ急速流入し、学習臨界期が開かれる。 学習臨界期が開くことによって、その後行う他の強化学習の習得効率が顕著に向上する(メモリープライミング)。

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情動記憶ダイナミズムの解明

代表者
東京慈恵会医科大学・総合医科学研究センター・神経科学研究部
渡部 文子

侵害受容シグナル、いわゆる「痛み」による負情動の記憶は、ショウジョウバエからヒトまで広く保存された現象であり、侵害受容に関連する感覚情報を記憶することが個体の生存に必須であることがうかがえる。 しかしながら「痛みシグナル」がどのように負情動記憶を制御するのか、については不明な点が多い。特に、負情動記憶そのものも慢性痛やストレス、恐怖体験などの感覚情報により流動的に変化することが知られているが、 そのメカニズムはほとんど分かっていない。本研究では、このような情動記憶のダイナミズムの基盤となる神経回路制御機構を明らかにすることを目的とする。

情動の座である扁桃体の中でも中心核には、橋の腕傍核から痛みシグナルが直接入力することが知られる。我々はこれまでの研究により、恐怖記憶形成には腕傍核の活動が重要な役割を担うこと、 さらに恐怖記憶形成後に腕傍核から扁桃体中心核へのシナプス増強がおこることを見出した。腕傍核から扁桃体中心核へのシナプス増強は、様々な慢性疼痛モデル動物でも報告されている。 そこで、本研究ではこれらの知見を発展させ、情動記憶ダイナミズム制御における扁桃体中心核の役割、特に痛みシグナルと感覚シグナルとの連合の座としての役割に焦点を絞り、その記憶制御における生理的意義を個体レベルで検討し、 さらに可塑性制御機構を分子・回路レベルで検討することで、慢性痛や恐怖体験などにより流動的に変化する情動記憶ダイナミズムの動作原理解明の端緒とする。

図

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光で記憶を操作するケミカルプローブの開発

代表者
東邦大学・理学部
古田 寿昭

モデル生物個体の記憶を光で操作可能にするケミカルプローブとして,新規多機能性ケージド化合物の開発を目指す。ケージド化合物とは,光分解性保護基で修飾した生理活性分子のことで, 光照射によってその活性をオン(またはオフ)にできる。我々のグループでは,1光子および2光子励起の感受性が他のどれよりも高いBhcケージド化合物を開発し, 細胞内のごく一部を刺激する局所光照射を効果的に活用して,細胞内シグナル伝達の詳細な機構解明に応用できること,また,運動性細胞の動きには全く摂動を与えることなく, 特定の細胞内シグナル伝達経路を活性化できることも示してきた。

本研究では,Bhcケージド化合物に適切な分子修飾を施してその機能性の向上を図り,光で記憶を操作可能にする新規ケミカルプローブの開発に応用する。研究期間内では,次の2項目を重点的に進める。 (1)狙った細胞種選択的に光活性化できるセカンドメッセンジャー類のケージド化合物を開発し,モデル生物個体脳において,任意の神経細胞の細胞内シグナル伝達経路を,マイクロ秒以内の時間分解能で制御する新手法開発に展開する。 (2)細胞内のタンパク質合成を制御する新規ケージド化合物を開発し,脳スライスサンプル中の任意の神経細胞内の局所光照射により,神経細胞の樹状突起内だけで目的のタンパク質合成を制御可能か明らかにする。

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神経と多臓器間で制御される温度適応メモリーの解析

代表者
甲南大学・理工学部/ 統合ニューロバイオロジー研究所
久原 篤

本研究では、動物の温度適応に関わるメモリーの解明に向け、シンプルな実験動物である線虫C. エレガンスを実験系とし、 神経系を含む多臓器間のメモリーネットワークを分子生理レベルで理解する。具体的には、新しく見つけたC. エレガンスの温度適応の記憶現象に関して、従来の分子遺伝学と最新の光技術を駆使して、 関連遺伝子の同定と神経活動の定量化から、メモリーの基本原理の解明をめざす。実験系として用いる低温適応とは、25℃で飼育された線虫が、2℃に置かれると死滅するのに対して、15℃飼育個体は2℃でも生存できる現象である。 興味深いことに、25℃で飼育した個体を、わずか3時間だけ15℃に置くことで、2℃で生存できることがみつかった。つまり、わずか3時間で体内のメモリーが変化したと考えられる。本研究では、温度シフト時に発現変動する遺伝子群をDNAマイクロアレイ解析から同定し、低温適応への関与を測定する。さらに、同定した遺伝子の機能細胞を、変異体の細胞特異的レスキュー実験から明らかにする。

低温適応のメモリーには、神経回路とその下流の組織間のネットワークが必要であると予想される。そこで、低温適応に関わる神経型とインスリン経路との上下関係を解析し、組織間の分子シグナルネットワークをとらえる。 さらに、これまでに解析を行っていない組織間ネットワークの優位関係を各組織の変異体をもちいた遺伝学的優位解析や定量的PCRや最新のカルシウムイメージングや神経細胞の光操作などによって明らかにする。 本研究から動物の温度適応に関わるメモリーの基本原理が明らかになると考えられる。

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注意レベルによって制御される聴覚記憶形成のための神経メカニズムの解明

代表者
沖縄科学技術大学院大学、臨界期の神経メカニズム研究ユニット
杉山(矢崎) 陽子

我々の脳内ではどの様に必要な情報のみの記憶を形成するのだろうか?

ヒトは幼少期に周りの大人が話す言葉を聴き、模倣することにより言語を発達する。このとき耳から聴こえる様々な音の中から、どの様に自分に向けられたヒトの言葉を聞き分け、言語を発達するのだろうか?

ヒトの言語発達と同様、ソングバードの一種であるキンカチョウは生後の発達期に聴く成鳥の歌(通常、親の歌)を記憶し、模倣することで歌を学習する。 面白いことにスピーカーからプレイバックされる受動的に聴いた歌は学習しないが、報酬として歌がプレイバックされると学習し、複数の歌を聴いても社会的繋がりの強い親の歌を学習する。 つまり注意・覚醒と言った個体の内的要因に依存して記憶が形成されることが考えられる。 本研究はキンカチョウの歌学習をモデルとして用い、「注意・覚醒といった個体の内的要因に依存した聴覚記憶形成のメカニズム」を明らかにすることを目的とする。

本研究ではin vivoにおける慢性的な神経活動の記録と薬理学的手法、ウィルスベクターを用いた遺伝薬理学的手法など幾つかの手法を組み合わせることによりキンカチョウの脳内にどの様に記憶が形成されるのか、 その神経回路メカニズムを明らかにする。特に注意・覚醒といった個体の内的要因を制御すると言われる神経伝達物質としてノルアドレナリン(NA)に注目し、NA作動性入力が記憶形成にどの様な影響を与えるのか明らかにする。

本研究は生得的に歌を学習するキンカチョウのというモデル動物を利用することで個体の内的要因と記憶形成の神経メカニズムを行動から神経回路、単一細胞レベルまで一貫した研究を行い、 記憶を司る神経回路メカニズムの解明に貢献するものである。

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プレイバックソングへの聴覚野神経細胞の聴覚応答の可塑的変化

親がヒナに歌って聴かせる(ライブソング)前(左側)に比べ、 後(右側)では親の歌(Tutor song)のプレイバックに対する応答のみが増強していることが分かる。つまり高い覚醒下での聴覚経験により聴覚応答に可塑的変化が起きたと考えられる。

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報酬に基づく学習記憶ダイナミズムの高次制御機構

代表者
生理学研究所・認知行動発達機構研究部門
小川 正晃

我々ヒトを含めた動物がより豊かに生存するためには、報酬に関連する重要な情報を、適度な動機を保ちつつ選択し、学習記憶し、後の行動に活かすことが必須である。 前頭前野の一領域である眼窩前頭皮質は、このような報酬に基づく「学習記憶ダイナミズム」の高次制御を担いうるが、従来の研究では学習記憶過程における眼窩前頭皮質の役割の詳細は未解明である。 眼窩前頭皮質は、扁桃核、線条体など他の脳領域との解剖学的関係がげっ歯類と霊長類で共通しており、近年の研究によって基本的な機能は保存されていることが明らかになっている。 よって、げっ歯類の眼窩前頭皮質は、種間で共通しうる根本的機能メカニズムを問う上で優れたモデルシステムである。

本研究は、げっ歯類における報酬に基づく条件刺激—報酬間の連合学習課題において、時間、文脈特異的に眼窩前頭皮質およびその神経回路活動を制御し、報酬に基づく「学習記憶ダイナミズム」 の高次制御における眼窩前頭皮質神経回路の根本的役割を明らかにする。そのために、最先端の光遺伝学的ツールを応用し、電気生理学、免疫組織化学等を組み合わせた解析を行う。 また、今後さらに特異的な細胞活動制御、観察を可能にする遺伝子改変動物、および新たな行動課題の開発を行う。

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幼児性健忘における歯状回成熟度の意義の解明

代表者
富山大学研究推進総合支援センター
高雄 啓三

記憶の転送・固定は、長期的で永続的な記憶の形成に必須のプロセスであり、人が人としての自己同一性を保ち、社会生活を営んでいくための脳機能の最重要な部分の1つである。 ヒトの幼児は短期的には記憶を保つことができるが、その後成長して大人になると3歳頃までのエピソードを思い出すことができない。これは「幼児性健忘 (infant amnesia)」と呼ばれるものであるが、 なぜ幼児期の記憶が失われてしまうのかについてはその詳細は明らかになっていない。代表者らはこれまでに160以上の異なる系統の遺伝子改変マウスに「網羅的テストバッテリー」を行うことによって、 各種の行動異常を示すマウスや精神・神経疾患などのモデルマウスを同定してきた。この中には精神疾患様の行動異常を示し、かつ海馬歯状回の神経細胞が未成熟な状態である「非成熟歯状回」を持つマウスが複数系統見つかっており、 これらのマウスでは共通して遠隔記憶が障害されている。このことから非成熟歯状回は遠隔記憶の障害に重要な役割を果たしている可能性が高いと考えられる。 また、神経細胞では過剰な神経活動が持続したときにシナプス入力を減らすホメオスタティック可塑性と呼ばれる現象が見られる。電気けいれん刺激により神経を過活動させることでホメオスタティックな可塑性が起こり、 海馬歯状回は脱成熟すると考えられる。本研究では、未成熟な歯状回が幼児性健忘を引き起こしているという仮説にもとづき、 神経細胞の活動を光遺伝学等の手法を用いて人為的に操作することで海馬歯状回の成熟度を双方向的に変化させ、遠隔記憶の欠落の一種である幼児性健忘における歯状回成熟度の意義を明らかにする。

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海馬における動的な記憶情報表現の可視化とそのメカニズムの解明

代表者
理化学研究所・脳科学総合研究センタ-
佐藤 正晃

哺乳類の記憶に重要な役割を果たす海馬の機能は、歴史的にげっ歯類の空間ナビゲーションとの関わりで詳細に研究されてきたが、 物理的な空間における場所を計算する海馬の神経計算アルゴリズムは、行動の計画や陳述記憶に必要な「心的空間」のナビゲーションと共通する普遍性をもつことが提唱されている。 特に海馬におけるCA1野の神経回路は、CA3野からの三シナプスループ経路と嗅内皮質第3層からの直接経路が収斂することから、 海馬内で処理された内的情報と皮質から送られる外界情報との「比較器」として機能すると考えられている。

本研究は海馬CA1野の神経回路における記憶情報の動的表現とそのメカニズムを、バーチャルリアリティ環境下で空間学習するマウスの二光子カルシウムイメージング実験で明らかにする。 具体的には、報酬を伴うバーチャル空間学習でマウスを訓練することによる海馬認知地図の可塑的変化と、それに関わる神経伝達物質および神経調節物質の役割に注目して研究を進める。 また錐体細胞だけでなく抑制性介在細胞の神経活動パターンをイメージングする技術を確立し、その記憶情報処理における機能的役割を探る。

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活性酸素種が担うマウス運動記憶の分散効果

代表者
東京都健康長寿医療センター研究所
遠藤 昌吾

記憶の機構解明は神経科学において基礎的ではあるが極めて魅力的な課題である。 様々な動物の記憶・学習に共通する性質である分散効果(spacing effect)は、記憶の形成・維持など、記憶のダイナミクスにおいて重要である。 分散効果は神経活動中に惹起された様々な変化とともに、トライアル間の“休憩”の重要性を意味するが、“休憩中”の詳細な分子・神経機構は不明である。 最近、“休憩中”にROS(活性酸素種)が産生されること、ROSがNO(一酸化窒素)と相互作用して持続性のシグナル分子(8-ニトロ-cGMP)が生成されることが見いだされた。 そこで本研究ではNO系が重要な役割を果たし、分散効果が顕著に観察されるマウスの小脳依存性運動学習(視機性眼球応答順応、OKR順応)に着目して、以下の仮説を検証する; 「学習の分散効果には、トライアル間の休憩中に産生されるROSとNOの相互作用による持続性シグナルが寄与する」。

記憶の基本性質である分散効果の研究は、 “悪役”ROSの役割に関する本研究はレドックス神経科学、休憩の神経科学という新分野を創造する可能性がある。 また、分散効果の研究は運動機能リハビリテーションにおける適切なトライアル間隔の設定に寄与する。さらに、リハビリテーションの効率化や訓練効果増強治療・薬物治療に手がかりを与え、高齢化社会におけるQOL向上に寄与する。

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A、古典的cGMP経路及び8-ニトロ-cGMP経路。NOとROSからRNS(Reactive nitrogen species)が生じる。RNSはGTPと反応して8-nitro-GTPを生成する。sGC(soluble guanylate cyclase)が8-nitro-GTPを8-ニトロ-cGMPへ変換する。
B、小脳依存性運動学習、視機性眼球順応(OKR)の測定方法。OKRは水平に往復運動するスクリーンを追うマウスの眼球運動の向上をCCDカメラで観察し解析する。

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